目的・目標を持つことの難しさと解決法

Posted by ohkawa on 2009 年 8 月 14 日 under コンサルノウハウ | Comments are off for this article

「目的・目標を持つことの難しさと解決法」

何事につけても、明確な目的・目標を持つことは重要なことだといわれます。しかし、コンサルティングの仕事をしていると、目的・目標設定あるいは、運用が必ずしもうまくいっていない現象に出合います。

【現象1】目的・目標が設定されていない。

事業企画を行う場合、新しいシステムの企画を考える場合、または業務改善プロジェクトを始める場合など、驚くことですが、そもそも目的・目標が設定されていないということによく出合います。新しい事業モデルを考えビジネス企画を立てるとき、まず企画の目的・目標を決めることから始めるのですが、これが、なかなか決まらず、あるいは、立てようとするが、なかなか意見がまとめられず、いつしか話題は事業の内容のこととなり、目的・目標は置き去りにされてしまっているということがありました。あるいは、ある難航しているプロジェクトのお手伝いをしたときのことですが、どうしてプロジェクトがうまくいかないかを調べてすぐに気づいた本質的な問題はプロジェクトの目的・目標が定義されていないということでした。どうして目的・目標を定義していないか聞いてみると、どのくらい具体的な目的・目標を設定していいかわからない、人(立場)によって目的・目標が異なるため、誰の立場で考えてよいかわからないという答えが返ってきました。このように、目的や目標を決めることは重要だとはわかっていても、実際に設定できないことが以外にも多いようです。

【現象2】目的・目標があいまいである。

企業の業務分析を行うときに、中期経営計画などで最初に経営目的・目標を確認してみると、一応目的・目標は定義されているが、それがスローガン的で、表現があいまいなため内容を確認する必要がある場合があります。そしてヒアリングしてみると人によって目的・目標の解釈が異なっていることが発覚したりします。たとえば、「グローバル市場でのNo1の地位を獲得する」という目標が設定されているとして、グローバル市場、No.1という言葉だけでは、社長や副社長、各取締役、現場の事業部長、メンバによって、それぞれ違ったイメージを持っているかもしれません。グローバル市場はアジア地区への進出であったり、米国進出であったり、ヨーロッパを含めた文字通り世界進出であるかもしれません。No.1も売上がNo.1 なのか、利益率がNo.1 なのか、シェアがNo.1 なのかなどそれぞれが異なることを考えている可能性があります。

【現象3】目的・目標が活用されていない。

会社員をやっているときに、目標管理による人事評価制度がありましたが、日常の業務遂行に追われ、半年後に面談をしてみると目的・目標自体が忘れ去られていました。あるいは、大規模で、長期間にわたるプロジェクトに途中参加したときに、そもそもプロジェクトの目的・目標はなにかを聞いてみると、・・そういえばなんだったかな・・という答えが返ってきました。このように、目的、目標を一度設定しても、時間が経つことで、目的目標が忘れ去れてしまったり、あるいは実際プロジェクトが進行されていく中で、目的目標が使われなかったりということが多々あります。

このように目的・目標というのは大事だとはわかっていますが、なかなか有効には扱われていないようです。では、このようなことが起こる原因はなんでしょうか。目的・目標がうまく定義・運用できていない原因は、以下のような目的・目標の本質的な性質にあるように思われます。

【原因1】目的・目標は人が言葉で定義するものである。

目的・目標は人が言葉で定義します。人はそれぞれ考えが異なり、言葉には常にあいまいさがあります。たとえば、前回の例に出しました”グローバル市場でのNo1の地位を獲得する”とした場合、グローバル市場とはなにか、あるいはNo1の地位とはどのような状態かなど人によって異なっている場合があります。どれだけ言葉の定義を明確にしても、科学の方程式のように数式で表さない限り、同じ言葉が同じ意味をもつということはないかもしれません。さらにわれわれが使う日本語は、通常、主語や目的語などが不明確なままでも文章をつくることができるため、よりあいまい性が増します。

【原因2】目的・目標はWhat-Howの入れ子構造になっている。

目的・目標は入れ子関係になっています。あることを実現することは、その上位の目的を実現するためだったりします。目的と手段の関係です。たとえば、100万円ためることは、新しい車の頭金にするためです。そして、新しい車を買う目的は、彼女をドライブに連れていくためです。この場合、100万円をためることも、新しい車を買うことも、彼女をドライブにつれていくことも目的・目標になりそうです。どれを目的・目標にしたらよいでしょうか。

【原因3】目的・目標は時間とともに変化、劣化するものである。

これは目的・目標の性質というよりは、それを運用する人間側の問題です。最初に立てた目的・目標を忘れてしまうことがよくあります。あるいは、プロジェクトなどの途中で【原因2】で説明した目的と手段の関係で、いつのまにか手段が目的になってしまう場合があります。「目的の手段化」です。ダイエットをする目的は、健康あるいは体型を維持するためですが、いつの間にか、ダイエットそのものが目的になり、過度に体重を落とすことが脅迫観念のようになってしまい、きちんと食事がとれなくなり、返って体調を壊すなどです。

ではどうやったら、これらの原因を克服して、目的・目標をうまく定義・運用できるようになるでしょうか。その解決法を考えてみましょう。

【解決策1】可能な限り明確な言葉で定義する。

これは、“【原因1】目的・目標は言葉で定義するものである。“の解決策です。日本語は特に言葉があいまいになりがちです。基本は、「誰」が「いつ」までに「なに」を「どれくらい」「どうする」を明確にします。たとえば、「お金をためる」という目的は、「私は」「今年中に」「お金を」「100万円」「ためる」というような感じで明確にします。必要に応じて言葉の定義や図表グラフなどをつけて補足をするのもよいと思います。

【解決策2】目的・目標の入れ子構造を見える化する。

これは“【原因2】目的・目標はWhat-Howの入れ子構造になっている。“の解決策です。というよりは、目的・目標が入れ子になっていることは仕方のないことです。これを受け入れて入れ子構造を階層図等で明示します。その中で、改めてなにを目的・目標にするかを決めます。前回の例でいうと、「100万円をためること」を目的にするのか、「新しい車を購入すること」を目的にするのか「彼女をドライブに連れていくこと」を目的にするのか決めます。目的の入れ子構造を見える化することで目的の手段化が起こったときにもすぐに気がつくことができます。

なお、積極的に入れ子構造を明確にするための手法として、「目的展開」という手法もあります。目的展開とは、ジェラルド・ナドラーのブレイクスルー思考という書籍の中で登場する考え方の一つで、たとえば、上記の「100万円をためる」を出発点として、それは「車を買うため」、その上位目的は「彼女をドライブに連れていくこと」その上位目的は、「休日に彼女を楽しませること」その上位目的は・・・と、上位目的はなにかを追求し続けていく方法です。上位目的を明確にしてみたら、結局は彼女を楽しませるためのなら、ドライブ以外にもあるし、実は彼女はドライブが好きではなくて、家でゲームをするほうが好きであり3万円でゲーム機を買うことにしたため、当初目的としていた100万円をためる必要がなかったということになったりします。

(参考)「ブレイクスルー思考」 ジェラルド・ナドラー博士/日比野省三博士著

【解決策3】目的を常に見えるようにする。

これは“【原因3】目的・目標は時間とともに変化、劣化するものである。“の解決策です。作った目的・目標は常に見えるようにしておきます。手帳に書く、壁に貼る、PCのスクリーンセーバでする、朝のミーティングで必ず読み上げる・・・などです。プロジェクト運営などで、これを繰り返すと分かりきったことだとして面倒くさがられたり、あるいは習慣化されずに忘れ去られたりしますが、変化しやすい目的・目標を毎日、毎回確認することは非常に有用です。

目的・目標というものは、個人生活でも、仕事上も非常に大切なものです。なによりも重要であるといってもいいかもしれません。これら、3つの点を注意することで、個人目標の実現、業務上のプロジェクト遂行などに大きな効果を発揮します。

以上

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